本企画では鶴岡の魅力あふれる食の世界を素朴な一汁三菜をベースとした食膳スタイルにする事で、鶴岡伝統の一品から現代風のアレンジを加えて作るオリジナルの一品まで、鶴岡ならでは季節感や地域色を生かした食の世界をご紹介する事をテーマにしています。
企画についての詳細は鶴岡街宿《鶴岡旅館組合》公式ホームぺージをご覧下さい。
※今月のテーマは「創作・アイディア・遊び心」(共通)
石狩屋旅館の食彩のしおり / 鶴岡の旅 食彩のしおり 二月

◆ 二月の献立
・ 風呂吹き大根の葱味噌掛け
・ 山形牛ぶつ網焼き
・ 鯵のたたきオリエンタル風
・ 帆立稚貝のお味噌汁
・ 弁慶めし(地元農家から直接仕入れた庄内米を使用)
・ 香のもの(白蕪の糠漬)

Q これはどんなお料理ですか?
A お出汁をしっかり含ませた瑞々しい大根に長葱を刻んで合わせた味噌をご用意しました。
Q 白い湯気が立ち上がって、温まりそうですね。
A 煮ものなど、柔らかくて甘い大根は冬が旬でもありますので、雪のちらつく寒い日なんかにはとてもホッとする料理ですね。当館ではこの大根に長葱の香りをふんだんに混ぜ込んだ甘味噌を載せ、今日はさらに小口に刻んだ浅月かけてご用意しました。

Q これはどんなお料理ですか?
A 山形牛の肩ロースを豪快にぶつ切りにし、網焼きにしています。
Q わざわざ網焼きにしているところがポイントですね?
A そうですね、フライパンやグリルパンでは出しにくい牛肉の香ばしさをシンプルな荒塩と胡椒、ガーリックで味付けしています。天に載せた山葵をつけて食べて頂くと、山葵の爽やかな香りと辛味が牛肉の香ばしさを引き立ててくれると思います。豪快にカプっと口一杯に頬張って食べて欲しいですね、笑


Q これはどんなお料理ですか?
A 脂の乗った鯵をたたきにし、たっぷりと載せた香味野菜と東洋の国々を想起する様な醤油ベースのチリソースで頂きます。
Q チリソースなんですね?
A 唐辛子の辛味を使うと言う意味で、そうですね。
まぁ今回は「創作」がテーマという事で、少し遊び心をもっての一汁三菜をご用意してみました。さすがに普段は宿で提供する事のない庄内地方伝統の弁慶めしなんかも組み合せてみるのも楽しいのではないかと、何気に全力で遊び心って感じですね。
この冬は海水温の高止まりなんかもあってか真冬でも脂の乗った大きめの鯵が手に入るんですよね。皮面を残したまま焼き霜を入れる事で天然鯵の香ばしい脂を生かせますし、そこに醤油ベースのソースを使ってコクのある唐辛子の辛味やゴマの香り、柑橘系の酸味を加える事で「あれ?この味、どこかの国で食べた記憶が...」そう想って頂ける様な無国籍料理的な一品にしてみました。最近は観光に留まらずお仕事でお泊まり頂くお客様の中にも東南アジア系の外国人の方が散見される様になってきましたので、どこか懐かしく感じる料理であるかもしれません。
そして、さっきも触れましたが、白飯の代わりにご用意した弁慶めしは当地の伝統料理なんです。最近はここまで手をかけておにぎりを作る人は減ってきましたが、味噌焼きおにぎりにしたご飯をさらに塩漬けにした青菜の葉で包み、またサッと網焼きにして出来上りです。ここ鶴岡は古くからの農村文化が食文化にも影響していますから、きっと農作業で田畑に出た農家の方々が手軽に美味しく食べられて保存も効く、そんな意味合いで広く浸透しここまで残されてきた料理じゃないかと思います。今風に言うなら究極のモバイルランチ、素手で食べられるお弁当ですよね。下に敷いた笹の葉も防腐効果があると言う事で、当時は弁慶めしもこんな大きな笹の葉に包まれて田畑にたがいて(たがく:方言/持つの意)行ってたのかもしれません。弁慶めしがかなり大きめなのは、この後私のお昼ご飯になるからですよ(真顔)
最後に、実は今日料理を盛りつけたの黒塗りのお膳と黒塗りの器たち、終戦から戦後と当館で実際に使っていたお膳なんです。こうして盛りつけられた膳料理って、もぅ70年以上前の風景でもあるんですよね。実は私も使ったのが初めてな、ここが新しいも古いもおおいに入り乱れた、最後の遊び心でした、笑
_ありがとうございました。
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